マーケティング・オートメーションツールを活用する 第05回 13年10月 / 最終更新:2022.12.16

法人向けデータセンターサービス・クラウドサービスの鈴与シンワート

国内各社の組織体制を見ると、自社のソリューションサイトやマイクロサイトなど、営業リードに繋げるためにWebサイトを活用している企業のマーケティング組織は、営業企画部、営業推進部と言った各事業部の中に設置していることが多いようです。Webサイトは全社に関わるという理由から、マーケティング本部や広報・宣伝部門で選任を置くケースもありますが、コンテンツの更新やリード発掘のための施策、プロモーションを行うのは現場に近い組織の中で、兼任担当が行っていることでしょう。しかし、Webサイト経由のリードは、営業リードに繋げるための1手段でしかなく、案件発掘のための施策は、リアルの展示会から、個別セミナー運営、日々のメール送信業務、コール業務など多岐に渡り、多忙な日々を送っています。

大手企業であれば、Web専任、メルマガ専任、展示会専任、コール専任または専門組織を置くこともできますが、この場合は組織が縦割りのことが多く、リード情報の管理は一元化されず個々での管理管轄になることが多いようです。マーケティング・オートメーションツールを活用している企業では、基本的なリードマネジメントは全社共通または、ユニット単位で既に整理・管理されており、業務改善や効率化、またはマーケ予算を最大化させる次のアクションとしてツールを活用しています。

マーケティング・オーメーションツールを検討する前に必要なリードマネジメント

先にリードマネジメントについて、簡単に補足します。リード情報データは、単に同じDBに入っていれば良いというレベルではなく、手動・自動に関わらず定期的に名寄せ作業を行い(マージ・パージ)、1ユーザとの過去の接点・接触履歴を読み解くことができるのが理想です。つまりデータのマージを行う際に、単にリードデータ項目だけを整理するのではなく、何がきっかけで獲得したリードなのか、リード元情報が時系列に見られるということです。最近は、国内のツールでもオンライン、オフライン両方で獲得したリードを、時系列で管理できる基本機能が搭載されていますので、コミュニケーション・シナリオの自動化やスコアリング、コンテンツの出し分けなど、高度なオートメーション機能まで必要ないという企業は、リードマネジメントツールを先に検討しても良いでしょう。
また、気を付けたいのが獲得したリードのパーミッション管理です。特にメールマガジンなどの配信には「配信停止」や「解除」依頼があった際、データを論理削除できる機能は必須です。序奏でご紹介した機能一覧では、「4. Email Marketing」に分類されることもありますが、「1. Lead Management」の1dataとしてDB管理する方が良いでしょう。

マーケティング・オートメーションツールを効果的に活用しているケース

どのような企業がツールを活用することで、導入効果が得られるのか、以下に3つの例を記載します。機能一覧で言えば、「2. Communication Management」に相当し、コミュニケーション・シナリオ(フロー)やスコアリング機能になります。

①Webサイトに多くのダウンロード資料を用意している企業

ダウンロードした瞬間に、インサイドセールス部隊で電話をかけて状況確認されている企業も時々目にしますが、専門部隊を持たない場合、この業務を回すことは不可能です。どの資料をどのタイミングでダウンロードしたのか、裏ではcookie単位で行動パターンをスコアリングし、一定の行動条件(ルール設定)にマッチしたユーザのみを、見込み度(案件に繋がる確度や可能性)が高い顧客と自動判定した上で、営業組織や確認コール業務へ引き継ぐ使い方が一般的です。
さらには、意思決定プロセスに合わせた資料(コンテンツ)と、メールベースのコミュニケーション・シナリオを用意しておき、その道筋を辿ったユーザのみをフィルタにかける、という手法もあります。ただし、現状の行動パターンを把握しておき、事前にコンテンツとシナリオをセットすることが前提になります。
※弊社Nexal、Inc.ではこのシナリオ設計コンサルを得意としています。
どちらにせよ、大量の潜在リード(cookie単位)の顕在化や顕在リード(個人を特定)に対し、営業アプローチの優先順位を付ける際に有効です。

②取扱い商材やソリューション、サービスなどが多岐に渡る企業

取扱い商材と、その対応組織が複雑に絡み合う企業で使われるケースです。グループ含む系列企業にも多く見られます。一般的に、このような企業では、サイト来訪者が選択したソリューションや閲覧している商材によって問合わせや資料請求フォームを動的に生成し、リード対応する組織にメールが送信される運用方法が取られています。しかし、リード状態を判断し横断的に提案する専門組織や共有DBを持たない場合、フォームを通過したリードは、各担当事業部に送信され、その後の行方は現場任せになります。毎年かけるプロモーション費は、リードを獲得するだけの一方通行という企業を多く見掛けます。
また、類似製品や複数ソリューションを持つ場合、商材の組み合わせで提案できる場合など、リード情報を一元的に管理しない限り、提案機会は現場の営業組織同士で情報交換する以外、難しくなります。仲の良い営業部長同士であれば、案件進捗会議で情報交換する可能性もありますが、多くの場合は案件の取り合いになります。営業組織の評価制度にも絡むことが多いので、根の深い問題です。
上記のような社内でのコンフリクトを起さないためにも、過去のリード情報や状態はスコア化によって興味内容や検討タイミング情報、事業部別の取引状況を一元管理しておき、ダッシュボードのような形式で社内のどの部署からでも、見込みリード情報を閲覧できるようにするケースがあります。商材単位やソリューション単位での、興味度が一目で把握できるメリットがあります。事業部で見込み客をセグメント抽出する際に、活用できます。

③エリア単位に組織が分かれている企業 国・地域単位

グローバル企業や外資系企業、またはエリアによって営業組織が分かれる企業で使われるケースです。国単位や地域単位で商習慣が異なるため、リード属性に応じてOne to Oneメールやコンテンツの出し分けなど、コミュニケーション・シナリオを分ける使い方です。グローバル企業ではオンラインマーケテイングが進んでいるため、部分的であってもシナリオを詳細に設計していますが、国内企業の場合はリードが大量に発生する場合以外、あまりお勧めしません。
国内エリアの場合は対象エリアに応じて担当営業が決まっており、常にフィールド営業として回っているため、メールするより電話して訪問する方が早いことがほとんどです。特に日本の商習慣では、主要都市部以外は訪問営業にて顔を突き合わせる方が効果的です。また、②のスコアリング手法にも近いですが、ユーザのネット内の詳細な行動データ(ログ)を云営業に開示するのではなく、「現場として〇〇をしましょう」という指示案まで設計するのがポイントです。
上記はほんの一例ですが、全ての企業にスコアリング手法がマッチするとは限りません。組織体制や商材、顧客との関係性やビジネスモデルによって多岐に渡り、時系列で接触状況やその時に獲得した顧客の情報が一元化できるだけで充分効果が出る場合もあります。リードナーチャリングの最終的なゴールは、案件に繋がる確度の高いリードをいかに営業組織に渡せるか、ですので、ツールに依存することなく何が必要なのか、社内で充分議論することをお勧めします。

困ったら是非ご相談くださいね。
# 次回は、ツールの組み合わせでどこまで実装できるか です。

 

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