ゲームで使うクラウド四方山話

著:古庄道明氏

ゲーム業界にとっての「クラウドサーバ」のメリット第01回 16年07月更新

みなさん、お初にお目にかかります。エンジニアの古庄道明、と申します。
今回、ご縁がありまして、ゲーム関連のコラムをいくつか書かせていただく事になりました。
どうぞよろしくお願いいたします。

さてさっそくではありますが。
鈴与シンワートさんも「S-Port」を出されておりますが、昨今、クライドというサービスが大変に賑やかになっております。
このクラウドというサービス形態のうち、IaaSと呼ばれるものやPaaSは、ゲーム関連と比較的深いつながりがあります。
今回は、特にIaaSを中心にして「なぜゲームにおいてクラウドが重要である事が多いのか」を、簡単にお話させていただければ、と思います。

これはゲーム業務問わず、な話ではあるのですが。
「作って終了」というシステムは大変に珍しく、通常は「作った後の運用こそがむしろ本番である」ほうが、圧倒的多数かと思われます。
昔のゲームは「作って終了」なものも多々あったのですが(ROM等に焼いたりしましたので)、昨今のゲームは「ネット配信」だのもありますし、ソーシャルゲームに至っては「何も更新がないのは死に体も同様」というような雰囲気もあります。
結果、色々とアップデートや新規機能などが追加されていきます。そのために、開発と同じかそれ以上に「運用が重要である」というのが、ゲームにも当てはまるようになりました。

さてこの「運用」のフェーズにおいて、欠かせないもののひとつに「コスト管理」があります。
ものすごく単純化した図式ではありますが「利益がマイナスになればゲーム閉鎖が視野に入る」ものですので、そのあたりは色々とビジネス的にシビアです。
そして「利益」というのは、単純には「収益 - 費用」となります。
また費用は「固定費用」と「変動費用」にわけることが(だいたい)できます。

一端少しお話を変えまして。
Webサービスを運用している以上、「サーバ / インフラ費用」というものが当然のようにかかってきます。
昔はあまりレンタルサーバというのもの潤沢にあるわけではなかったので、「データセンターでラック単位で借りる」+「(物理)サーバは自前で用意する」というのが比較的ポピュラーでした。
ただこの方法だと、スケーラビリティに些かの心配が伴います。

まず一つは「ラック単位」なので、下手をすると「1台だけサーバを追加したいのに、ラックの都合上、1ラック増やさないといけなくなった」というようなケースがあります。
「ラックの追加」はそんなにお安い金額でもないので、「1台増やしたいだけなのになぜこんな高コストに!!」といった感じで悩む光景も、ずいぶんと拝見してきたように思います。

次に「サーバを用意する速度」。
物理的にサーバを持ち込んでからのセットアップなので、最低でも1日仕事。データセンターを(費用その他の理由で)比較的安い地方に持っていったりすると、さらに大変な事になる、といったお話も、伝聞ながら伺っております(筆者はありがたい事に都内のデータセンターばかりでしたが)。

最後に、以外と失念しやすいのが「サーバを減らす時」。
スケーラビリティというものは「伸ばす方向にのみ優秀」であっても、困る事があります。
これが「複数のサービスで大量にサーバを使っている」会社さまであれば「じゃぁこのサーバはほかに回して」と言えるのでしょうが、そこまでデカい規模でない会社さまの場合、サーバを減らそうにもいったいどうやったら…といったあたりでお困りのケースは少なからずあろうかと思います。

上述のような問題を、IaaSでは一通り「非常にスムーズに」解決してくれます。
つまり「1台増やしたら1台分のコストですみ」「ラック単位、といった変な縛りがなく」「減らす時も(プログラムの組み方等注意すべき点はあるにしても)簡単に減らせる」事ができます。

結果として、今までは「売上やアクセス数などとは(ほぼ)関係なく発生する固定費用」であったインフラ費用が、ある程度、とはいえ「売上やアクセス数に応じて増減させることができる変動費用」にすることができるようになりました。
これは経営としては結構大きなメリットになると思います。
そうしますと「費用が利益を圧迫しないので、なんとか運用を続けられる!」という芽が、固定費用の頃よりは、沢山出てきます。

もちろん、クラウドならではの問題点(と言われていたこと)も、少なからずあります。
曰く「セキュリティが甘いのではないか?(よそのHDDの中身が見れるのではないか?)」、曰く「データへのアクセス速度が遅い」、曰く「よく落ちる」、等々。

上述が「全くないか?」と聞かれると…セキュリティについては多くのクラウド運営会社が十分な状態を確保し、データアクセス速度は問題ないレベルで速度があがりました。
「落ちる」については今でも時々拝見はいたしますが、大規模かつ「クラウド業者に責任があるもの」は激減しましたので、今後も改善が見込まれることが十分に期待できます。
物理サーバであっても「落ちる時は落ちる」ものですし。

問題点が十分に改善されている状態で「経営的にメリットがある」というのは、さすがに「無視できない」魅力、ではないでしょうか。
また、特にゲームの場合、マーケティングによっては「ある瞬間爆発的にアクセスが増える」が発生し、このタイミングで「アクセス過多でサーバが落ちる」となると、かけたマーケティング費用が霧散してしまうので、大変に避けたいところだと思われます。
そしてその一方で「爆発的に増えたアクセスは、早ければ数日であっという間にしぼむ」ので。もし「爆発的なアクセス」に合わせた数を物理で用意してしまうと、次は「インフラ代が利益を延々と圧迫し続ける」状態、というのが発生してしまいますが、IaaSであれば「必要数程度まで減らす」事ができるので、費用が圧迫する事も大分と防ぐことができます。

このように。
ビジネス全体にとってIaaSというのは非常に魅力的ですが、おそらくはそれと同じか、或いはそれ以上に、ゲームにとってIaaSは「インフラ費用が「固定から変動になる」という点」で、非常に興味深く、有益な技術だと思います。