データセンターの冷却システムとは?必要性や種類、選ぶ際のポイントを解説 第06回 25年07月 / 最終更新:2025.07.08

データセンターとは、大量のサーバやネットワーク機器を管理し、データの保存や処理、管理などをする施設です。サーバやネットワーク機器を24時間365日安定して稼働させるために、日々厳格な管理が行われています。その中でも特にデータセンターの運用を支えているのが「冷却システム」です。

本コラムでは、データセンターにおける冷却システムの概要や必要性、種類、選定ポイントなどを解説します。

データセンターの冷却システムとは?

データセンターの冷却システムとは、データセンター内で稼働するサーバやネットワーク機器が発生する熱を効率的に排出し、適切な温度環境を維持するためのシステムです。冷却システムを設置することで、サーバや機器のパフォーマンスを最大限に引き出します。

冷却システムの必要性

サーバやネットワーク機器を大量に管理しているデータセンターでは、機器から膨大な熱が発生します。これを放置すると機器の過熱による故障や性能低下が発生し、最悪の場合はシステムダウンやデータ損失などにつながる可能性があります。冷却システムを適切に設置・管理することで、これらのリスクを軽減することができます。さらに、データセンターの安定稼働やビジネスの継続性確保などにもつながります。

冷却システムは熱発生のリスクを軽減し、データセンターの安定稼働を支える重要な役割を果たします。特に近年では、AIを搭載した冷却システムが増えており、機器の冷却だけでなく、運用負担の軽減やコスト削減なども実現できるようになりました。

データセンターの冷却システムの市場規模

市場調査会社の「Fortune Business Insights」が発表したデータによると、グローバルデータセンター冷却市場の規模は2024年に168億4,000万米ドルと評価されています。今後も成長が続くと予測されており、以下のような市場規模が示されています。

・2025年:1,878億米ドル
・2032年:4,248億米ドル
・年平均成長率(CAGR):12.4%

参考:Fortune Business Insights「データセンター冷却市場の規模

データセンターにおける冷却システムの種類

データセンターにおける冷却システムの種類は、大きく以下の3つです。

・水冷式
・空冷式
・液冷式

それぞれの特長やメリット・デメリットを解説します。

水冷式

水冷式は、水を使って熱を吸収・排出する冷却方式です。サーバラックや冷却ユニットに冷水を循環させ、サーバ内部で発生する熱を吸収して外部に放出します。

水冷式のメリットは、高い冷却効率です。水は空気よりも熱伝導率が高いため、大量の熱を効率的に吸収できます。電力コストを抑えやすく、エネルギー効率が良いのもメリットです。

水冷式のデメリットは初期導入コストが高い点です。導入する際は、設備の設置費用や配管工事などが必要となります。また、冷却パイプから水漏れが発生するとサーバに影響が及ぶため、配管やポンプの管理などの定期メンテナンスも欠かせません。

水冷式は、高効率な冷却が求められる大規模なデータセンターなどでよく利用されています。

空冷式

空冷式は、空気を利用してサーバ内部の熱を外部に排出する冷却方式です。一般的には、サーバールーム内にCRAC(Computer Room Air Conditioning)ユニットや空調ユニットを設置し、室内空気を循環させて冷却します。

空冷式のメリットは、水冷式に比べて設備投資が少ない点です。また、漏水のリスクもありません。一方、デメリットは冷却効率が低い点です。特にラック内に大量のサーバが設置されていると、空気の循環が行き届かないため、効率的な冷却が難しくなります。また、空調設備を常に稼働させるため、電力消費も大きくなりがちです。

空冷式は、サーバ台数が少なくラック密度が低い中小規模のデータセンターや、小規模事業所などに適しています。

液冷式

液冷式は、冷却液を直接サーバやCPUに接触させて熱を吸収・排出する冷却方式です。液冷式は大きく以下の2つです。

・直接浸漬冷却(サーバや部品全体を特殊液体に完全に浸漬させて冷却する)
・チップ直接冷却(CPUやGPUといった主要発熱部に冷却プレートを直接取り付けて冷却液を循環させる)

液冷式のメリットは、冷却効率が非常に高い点です。液体が直接熱源に触れるため、空冷や水冷よりも効率的に熱を吸収できます。熱伝導率が高いため、短時間で効果的に冷却することが可能です。ラック密度が高くても冷却性能が落ちないため、限られたスペースの有効活用に適しています。

液冷式のデメリットは、冷却液などの導入コストが高額になりやすい点です。冷却液が劣化すると冷却性能が低下するため、性能を維持するためのメンテナンスも欠かせません。また、冷却液が漏れると機器全体が破損するリスクがあるため、厳重な管理が必要です。

液冷式は、AIやビッグデータ解析など、膨大な計算処理をする機器に適しています。

冷却システムを選ぶ際のポイント

冷却システムを選ぶ際は、以下のポイントを確認しましょう。

・データセンターの規模や使用目的
・サーバの密度や発熱量
・冷却性能とコストバランス
・将来的な拡張性

それぞれのポイントを解説します。

データセンターの規模や使用目的

データセンターの規模や使用目的に応じて、最適な冷却方式は異なります。大規模データセンターと小規模データセンターとでは必要な冷却性能や投資額が大きく異なるため、運用形態に合わせて選ぶことがポイントです。

たとえば大規模データセンターの場合、大量のサーバを効率的に冷却する必要があるため、水冷式や液冷式が適しています。中小規模のデータセンターの場合、設備コストを抑えつつ、運用コストも意識する必要があるため、空冷式が適しています。

サーバの密度や発熱量

サーバの密度や発熱量によって、選択すべき冷却方式は変わります。サーバ密度が高い環境の場合は空冷式では冷却が難しいため、水冷式や液冷式を採用しましょう。しかし、比較的サーバ密度が低ければ、空冷式でも十分に対応することが可能です。

発熱量が多い環境の場合、液冷式や水冷式を採用することで熱集中を効率的に除去できます。発熱源に直接冷却液を接触させることで、短時間で温度を下げることができます。

将来的な拡張性

データセンターはビジネスが成長するにつれて、サーバ台数や処理能力を増強する必要が生じます。その際、冷却システムもそれに対応する拡張性が求められます。特にクラウドサービスやビッグデータ解析を担うデータセンターには、柔軟に増設できる冷却システムを選ぶことが重要です。将来的なサーバ増設や技術進化を見据えた拡張性の高い冷却システムを選ぶことで、運用の継続性を確保できます。

データセンターの冷却システムのまとめ

このコラムでは、データセンターにおける冷却システムの必要性や種類、選び方について解説しました。冷却システムを導入すれば、データセンター内で稼働するサーバやネットワーク機器が発生する熱を効率的に排出し、適切な温度環境を維持できます。

データセンターにおける冷却システムの種類は、水冷式・空冷式・液冷式の3つです。データセンターの規模や使用目的に応じて最適な冷却方式は選ぶようにしましょう。

鈴与シンワートの「S-Port データセンターサービス」では、サーバの初期設定や構築作業などのサービスや専門チームによる24時間365日の監視・障害対応などのサービスも提供しています。貴社の要望や予算にあわせたサービスを提案できますので、是非お気軽にご相談ください。