データセンターのトラブル事例 ~ネットワークトラブル編~ 第07回 25年07月 / 最終更新:2025.07.16
目次
データセンターは、企業のITインフラを支える重要な施設ですが、ネットワークのトラブルは避けられない課題の1つです。
ネットワークにトラブルが生じるとさまざまな業務やサービスに影響が出て、最悪の場合は業務が完全に停止することもあります。
本コラムでは、データセンターで実際に発生したネットワークトラブルの事例と、それを未然に防ぐための対策について詳しく解説します。
データセンターのネットワークトラブル事例
データセンターでは、さまざまな要因によってネットワークトラブルが発生します。
例えば、機器の故障やトラフィックの急増、リソース不足、異常なパケットの発生などが挙げられます。
ここでは、それぞれのトラブル事例について詳しく解説します。

ネットワーク機器の故障
ネットワークトラブルの原因として最も多いのが、ネットワーク機器のハードウェア故障です。スイッチやルータ、ファイアウォールなどの機器が物理的に故障すると、通信が完全に停止する可能性があります。特に問題となるのは、特定のポートやコンポーネントのみが故障するケースです。
例えば、あるスイッチのポートが一部だけ通信不能になった場合、そのポートに接続されているサーバやストレージだけが影響を受けます。通信全体が停止するわけではないため、問題の原因究明に時間がかかることがあります。
トラフィックの急増
サーバやストレージへのアクセスが急増した際に、ネットワーク機器の処理能力を超えてパケットが適切に処理されず、通信の遅延や断続的な接続障害が発生するケースがあります。特に、大規模なイベントやプロモーションの際には、Webサイトに予想以上のアクセスが発生し、ネットワーク容量がひっ迫することがあります。
また、企業内ネットワークでは、大容量のファイルを一斉に転送したり、バックアップ処理が集中したりすることで、トラフィックが急増するケースがあります。これにより、通常業務用のネットワークが影響を受け、通信遅延やパケットロスが発生する可能性があります。
リソース不足
ネットワーク機器は、機種によって処理できる最大トラフィック量が決まっています。また、近年では各種データも大容量化しており、設計時にリソースの余裕を持たせていたとしても、運用時にリソースが不足するケースも少なくありません。
リソースが不足すると、通信速度の低下やパケットロスが発生し、結果的にネットワーク全体が不安定になります。特に、サービスや業務のピーク時にはトラフィックが増大するため、リソース不足に陥りやすい傾向にあります。
異常なパケットの発生
ソフトウェアのバグやハードウェアの異常によって、大量にパケット発生がすることがあります。そうなると、ネットワーク容量がひっ迫し、通信が不安定になります。
また、DDoS攻撃のようなサイバー攻撃によって、意図的に異常なパケットが大量に送信されるケースもあります。DDoS攻撃は、サーバやネットワーク機器に過剰な負荷をかけ、サービスを停止させることを目的としたサイバー攻撃です。
ネットワークトラブルを防ぐための対策
ネットワークトラブルを完全に防ぐことは難しいですが、適切な対策を行うことでリスクを最小限に抑えることができます。
ここでは、ネットワークトラブルを防ぐための具体的な方法を紹介します。
機器の冗長化と点検
ネットワーク機器の故障による影響を最小限に抑えるのは、スイッチやルータなどを冗長化することが有効です。冗長化する際は、単一障害点を極力なくすことが重要です。単一障害点とは、障害が発生するとシステム全体が停止してしまう箇所のことを指します。
また、定期的にハードウェアの点検やファームウェアをアップデートすることで、ハードウェア故障や不具合によるトラブルリスクを軽減することができます。経年劣化による機器の寿命を考慮して、機器のリプレイスを計画的に進めることも大切です。
負荷分散
ネットワーク容量のひっ迫を軽減するためには、ロードバランサを活用した負荷分散が有効です。ロードバランサは、複数のサーバやネットワーク回線にトラフィックを分散させて、特定の機器に過剰な負荷をかけることを防ぐ装置です。
ロードバランサを活用すればシステム全体のパフォーマンスを向上させるたけではなく、サーバ障害発生時に通信を別のサーバへ自動で振り分け、可用性を高める効果が期待されます。
ネットワーク監視
異常なパケットが発生した際に迅速に対応するためには、ネットワーク上のパケットをモニターする仕組みを導入することが有効です。
例えば、Zabbixなどのネットワーク監視ツールを活用すれば、トラフィックの異常を検知してネットワーク管理者へ通知することができます。
また、IDS(侵入検知システム)やIPS(侵入防止システム)などを導入すれば、不審なパケットをリアルタイムで検知したり、自動的に不正パケットを遮断したりすることができます。
データセンターサービスの活用
ネットワークトラブルの影響を最小限に抑えるためには、データセンター事業者が提供しているサービスを活用することもおすすめです。
ここでは、データセンターサービスの具体例を紹介します。
監視・マネージドサービス
データセンターが提供する監視サービスには、サーバやネットワーク機器が正常に動作しているかをモニターし、異常が発生した際にアラートを発報する「死活監視(ping監視)」や、特定の通信ポートの状態を監視し、通信が可能かどうかをモニターする「ポート監視」サービスなどがあります。
また、監視だけではなく、障害発生時のオペレーション代行を行うマネージドサービスを提供している事業者もあります。たとえば、ネットワーク障害が発生した際に、あらかじめ準備した手順書に沿って、データセンターのオペレーターが障害対応をするサービスなどがあります
これらのサービスを活用すれば、万が一の障害発生時にも迅速に対応することが可能になります。
関連サービス:監視・マネージドサービス
DDoS対策サービス
DDoS攻撃によるネットワーク障害を防ぐためには、データセンター事業者が提供しているDDoS対策サービスの活用が有効です。DDoS対策サービスは、システムへの通信がDDoS防御システムを経由することにより、不正なアクセスを検知し遮断するサービスです。
不正なアクセスの検知および遮断は自動で行われるため、監視や対応にかかる負担を軽減することができ、安定したサービスの提供を実現します。特に近年ではDDoS攻撃などのサイバー攻撃が増加している傾向があるため、DDoS対策サービスを活用することはリスクを最小限に抑えるための効果的な手段になります。
関連サービス:S-Port DDoS対策サービス
データセンター「ネットワークトラブル」のまとめ
データセンターのネットワークトラブルは、機器の故障やトラフィックの増加、異常なパケットの発生など、さまざまな要因で起こります。しかし、適切な対策を講じることで、リスクを最小限に抑え、安定した運用を実現することができます。
ネットワークトラブルが発生した際は、いかに迅速に対応できるかが被害を最小限に抑えるためのポイントになります。そのため、ネットワーク監視ツールや、IDS/IPSを導入し、ネットワークの異常を迅速に検知し、対応することが重要です。
ネットワークを自社で24時間365日監視することは難しいため、データセンターサービスを活用することを検討してみてはいかがでしょうか。
鈴与シンワートが提供している「S-Port データセンターサービス」では、専門チームによるサーバやネットワーク、ストレージなどの初期設定や構築作業、24時間365日の監視や障害対応など、幅広いサービスを提供しています。
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