AIデータセンターとは?生成AI時代に求められるデータセンター 第07回 26年01月 / 最終更新:2026.01.08

ChatGPTのような対話型AIや画像生成AIの登場は、日常生活だけでなくビジネスの在り方をも大きく変えています。製造、物流、金融など、あらゆる業界でAI活用が進む中、データセンターにも変化が現れています。その理由は、生成AIが従来のITシステムとは比にならない膨大な計算リソースを必要とし、既存のデータセンターでは対応しきれない課題が次々と浮上しているからです。

電力消費の急増、冷却技術の限界、ネットワーク帯域の逼迫などの問題を解決するため、世界中で「AIデータセンター」という新しい概念が広がりつつあります。

本コラムでは、生成AI時代に求められるデータセンターの条件、最新の市場動向を解説します。

生成AIがもたらすデータセンターへのインパクト

生成AIや大規模言語モデル(LLM)の普及は、データセンターの役割と構造に劇的な変化をもたらしています。従来のデータセンターでは、生成AIの高度な処理能力に対応しきれないケースが増えているのです。こうした高負荷な計算を効率的に処理するため、世界では「AI(人工知能)データセンター」が次々と建設されています。

AIデータセンターとは

AIデータセンターは、生成AIや機械学習モデルのトレーニング・推論を効率的に行うために設計されたデータセンターです。

生成AIモデルは、膨大な計算量を必要とします。
従来型データセンターのCPU中心の構成では処理が追いつかないため、AIデータセンターはGPUやTPUなどの高性能アクセラレーターを大量に搭載し、膨大な計算処理を高速で実行できる構成になっています。

AIデータセンター イメージ画像

また、ユーザーのリクエストにリアルタイムで答える必要があるなどの特徴から、ネットワーク帯域やストレージI/O性能も強化されています。

AIデータセンターと従来型データセンターの違い

AIデータセンターと従来型データセンターはどちらも、サーバやストレージシステム、ネットワーク機器などのハードウェアを含み、セキュリティ、エネルギー効率などを考慮しなければならない点は共通していますが、求められる処理能力が異なるため、違いも多くあります。

従来のデータセンターは、CPU中心の構成で、ストレージを提供したり、企業の業務システムやクラウドサービスを安定的に稼働させることが主な目的でした。一方、AIデータセンターは、GPUや専用AIチップなどを活用し、高ストレージ、並列処理性能を重視します。高性能なGPUを用いているため、従来と比較して発熱量が増え、電力消費量や冷却負荷が大きくなります。

そのため、液浸冷却などの新しい冷却技術が導入されるケースが増えています。さらに、AIモデルの学習には膨大なデータ転送が必要なため、ネットワーク構成も高帯域・低レイテンシを実現する設計が求められます。

参考:IBM 『AIデータセンターとは』
https://www.ibm.com/jp-ja/think/topics/ai-data-center

AIデータセンターの必要性

先述の通り、生成AIや大規模言語モデル(LLM)の普及に伴い、従来のデータセンターでは処理能力が不足するケースが増えています。特に、AIモデルの学習には膨大な計算リソースと電力が必要であり、専用設計のデータセンターがなければ、性能・コスト・環境負荷の面で対応が困難になります。そこで、GPU密度を高めた設計や、再生可能エネルギーを活用したサステナブルな運用が注目されています。

AIデータセンターへの進化

ここでは、従来のデータセンターからAIデータセンターへどのように変化しているのかを見ていきます。

膨大な計算量とGPU依存

生成AIモデル、特に大規模言語モデル(LLM)や画像生成モデルは、数百億から数兆のパラメータを持ちます。従来型データセンターに見られるCPU中心の構成では、学習や推論に膨大な時間がかかり、サービス提供に支障をきたしかねません。

そのため、従来のCPUではなく、GPUやAI専用アクセラレーターが不可欠です。結果として、AIデータセンターはGPUクラスタを大量に搭載し、AIワークロードに最適化された構成へと進化しています。

最新のデータセンターでは、NVIDIA H100やAMD MI300などのGPUを大量に搭載し、AI専用アクセラレーターを組み合わせることで、処理性能を飛躍的に向上させています。

電力・冷却への負荷増大

GPUは高性能ですが、その分消費電力も膨大なため、冷却技術の高度化が急務となっています。生成AIの普及を支えるデータセンターでは、従来の数倍の電力が必要になるケースも珍しくありません。

例えば、一般的なGoogleでの検索リクエストが0.3Wh程度の電力を消費するのに対し、ChatGPTの1回のリクエストは約2.9Whを消費するとされ、約10倍の負荷増となります。これには、従来の空冷方式では対応できないため、液浸冷却などの技術の採用による、電力効率と環境負荷低減の両立が求められています。また、リアドア型やInRow型空調、冷却塔を組み合わせたソリューションが標準化しつつあります。

【参考】
BALKAN GREEN ENERGY NEWS 『ChatGPT consumes enough power in one year to charge over three million electric cars』
https://balkangreenenergynews.com/chatgpt-consumes-enough-power-in-one-year-to-charge-over-three-million-electric-cars

Taskhub 『ChatGPTの消費電力は家庭1.7万世帯分?現状と対策を解説』
https://taskhub.jp/useful/chatgpt-power-consumption

株式会社富士キメラ総研 プレスリリース 「『データセンタービジネス市場調査総覧 2025年版 市場編』まとまる(2025/3/24発表 第25029号)」
https://www.fcr.co.jp/pr/25029.htm

ネットワーク帯域とレイテンシの課題

生成AIは、リアルタイム性が重要です。特に、生成AIを活用したサービスでは、ユーザーからの入力に対して瞬時に応答する必要があります。データセンターには超低レイテンシのネットワーク設計と、高速なデータ転送能力が不可欠なのです。そのため、バックボーンの強化やエッジデータセンターとの連携が加速しています。

生成AI時代におけるデータセンター市場動向と日本の戦略的対応

生成AIが普及してきている状況下で、データセンターの市場にも変化が見られます。ここでは、データセンター市場の情報や戦略について解説していきます。

国内市場の急拡大と投資トレンド

日本のAIデータセンターの市場規模は、2025年に6,490万米ドルと推定され、2030年まで年平均成長率26.14%で拡大すると予測されています。この背景には、生成AIを活用する企業の急増と、政府によるAIスーパーコンピューター開発支援(総額725億円)があります。さらに、マイクロソフトは日本国内でAI基盤強化を目的に約4,400億円を投資する計画を発表しており、AWSやOracleも国内データセンターへの1兆円を超える投資計画を発表しています。

こうしたデータセンターの増強は、東京圏や大阪圏を中心に進められていますが、電力供給や土地確保の課題から、北海道や九州など地方への分散化も注目されています。実際、国内の企業では、香川県で廃校を活用した生成AI向けデータセンター開発計画を発表しており、コスト削減と地域創生を両立するモデルとして評価されています。

【参考】
株式会社富士キメラ総研 『国内データセンター市場におけるAI需要/地方分散/再エネ電源』
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/joho/conference/digital_infrastructure/0007/005_fujichimera.pdf

大和エナジー・インフラ株式会社 プレスリリース『生成AI向けデータセンター案件への出資について』
https://www.nikkei.com/nkd/disclosure/tdnr/20240924587562/

コラム誘導バナー
「データセンターの市場規模は今後どうなる?
データセンターと共に解説します!
解説コラムはこちらをクリック」

ハイパースケーラー戦略と日本のポジショニング

世界的なAIデータセンター市場は、2025年に177億米ドル、2032年には936億米ドルに達すると予測されており、北米が依然として最大シェアを占めます。日本も、アジアにおけるAIイノベーションハブとしての地位を確立しつつあり、国内クラウド事業者や通信キャリアがハイパースケールデータセンターの建設を加速しています。

例えば、国内の企業では、GPUを搭載するNvidiaの最新サーバラックを設置した、アジア最大といわれるAIデータセンターを大阪に建設するなど、国内外のAI需要に対応する体制を整える動きが始まっています。

今後、日本の競争力を左右するのは、再生可能エネルギーの活用による持続可能性確保と、液冷技術・AI最適化ソフトウェアの高度化です。政府の「デジタル田園都市構想」に基づく地方分散型データセンターの推進も、電力負荷分散と地域経済活性化の観点から重要な戦略となります。

【参考】
FORTUNE BUSINESS INSIGHTS 『AIデータセンター市場規模、シェア及び業界分析』
AIデータセンター市場規模・シェア|グローバル成長レポート[2032年]

Mordor Intelligence 『日本の人工知能(ai)最適化データセンター市場規模・シェア分析 - 成長動向と予測(2025年~2030年)』
https://www.mordorintelligence.com/ja/industry-reports/japan-artificial-intelligence-ai-data-center-market

データセンターのサステナビリティと次世代技術

近年、データセンターの環境に与える影響が懸念されています。ここでは、環境に配慮するための施策とそれを実現する次世代技術について見ていきます。

サステナビリティの重要性

データセンターは膨大な電力を消費するため、環境負荷の低減が喫緊の課題となっています。特に、生成AIやクラウドサービスの急速な普及により、電力需要は急激に増加しています。この背景から、企業はESG(環境・社会・ガバナンス)戦略の一環として、再生可能エネルギーの導入や省エネ技術の採用を加速させています。

再生可能エネルギーの活用

GoogleやMicrosoftなどの大手クラウド事業者は、データセンターの運営において100%再生可能エネルギーを目指す取り組みを進めています。風力や太陽光発電に加え、地域特性に応じた水力発電や地熱発電の活用も検討されています。

【参考】
Google Cloud 『100% 再生可能エネルギーの 5 年間の実績と 24 時間 365 日カーボンフリーな未来への展望』
https://cloud.google.com/blog/ja/topics/sustainability/5-years-of-100-percent-renewable-energy

Microsoft 『Microsoft Datacenter Sustainability』
https://datacenters.microsoft.com/sustainability

液冷技術による効率化

従来の空冷方式では、サーバの冷却に大量の電力を消費しますが、液冷技術は冷却効率が高く、PUE(Power Usage Effectiveness)を改善します。特に、AI向けGPUサーバは高発熱のため、液冷技術の導入が急務となっています。国内外で液冷技術を採用する事例が増えており、今後は標準化が進むと予測されます。

ハイブリッド戦略と次世代技術

オンプレミス環境とクラウド環境を組み合わせたハイブリッド戦略は、柔軟性と効率性を両立する手段として注目されています。さらに、AIによる自動負荷分散や予測保守、エッジコンピューティングとの連携により、データセンターの運用はよりスマート化されることが見込まれます。これらの技術は、生成AIが台頭する時代のデータセンターのサステナビリティとコスト最適化を同時に実現する鍵となります。

ハイブリッド構成実現可能
鈴与シンワートが提供するデータセンターサービス
サービスページ遷移バナー

「生成AI時代のデータセンター」のまとめ

生成AIの急速な普及は、データセンターの役割に変化をもたらしています。従来型データセンターのCPU中心の構成では対応できない膨大な計算量、リアルタイム性の要求、電力負荷、冷却課題により、データセンターはGPUクラスタや液冷技術、超低レイテンシネットワークを備えた次世代型へと進化しています。

生成AI時代において、データセンター戦略は単なるITインフラ選定ではなく、企業の競争力を左右する課題ともいえます。今後の市場動向を見据え、最適なパートナー選びと技術投資を進めることが、持続的な成長への第一歩となります。

関連コラム誘導バナー
「データセンターの建設ラッシュ ~現状と今後の展望について解説~」

鈴与シンワートが提供している「S-Port データセンターサービス」では、専門チームによるサーバやネットワーク、ストレージなどの初期設定や構築作業、24時間365日の監視や障害対応など、幅広いサービスを提供しています。

貴社の要望や予算に応じたサービスの提案をします。ぜひお気軽にご相談ください。

S-Portお問合せ・資料請求バナー