ナーチャリングを実行するためのマーケティング・オートメーションの現場から

著:上島千鶴氏

ツールの組み合わせでどこまで実装できるか第06回 13年11月更新

某企業に訪問した際、マーケティングの業務効率化や個別コミュニケーションを取りながらナーチャリングするには、どのようなツールが良いか聞かれました。その時「国産で・・・」という強い口調での前提条件付きでした。お話を伺うと、以前、海外のシステムを全社で導入した際、そのベンダーが突然買収され日本から撤退。代理店もサポートの引き継ぎもないまま大変な経験をされたようです。

 社内でツールやシステム導入の検討を行う際、何を選択肢として比較・調査するのか。前提条件として『国産』というフィルタを設定している隠れ?企業は多いのではないでしょうか。海外ツールでも日本にディストリビュータが多くおり、実績が多数あれば問題ないというケースもあります。しかし新興企業でいつ買収されるか分からないシステムを全社で導入するのは、検討からはずしたいという『本音』は、深くお話をお伺いしないと出てこない条件だったりします。

 そこで今回のコラムは、リードナーチャリングを行う上で最低限必要な環境を構築するための機能について紹介します。また、複数ツールの組み合わせで環境を構築(国産ベンダーの組み合わせ)した例を記載したいと思います。
まず、ナーチャリングに必要な機能を説明します。※独自開発、または各ベンダーのAPI連携、社内の基幹システムと繋ぐ場合は、ID設計は必要不可欠です。

********************************************©Nexal,Inc.
Step1▼最低限必要な機能
 ①リード管理(I/O可、CRMに含む場合もあり)
 ②行動トラッキング機能(アクセス解析や行動追跡)
 ③個別メール配信機能(テンプレートや差込、スケジューリング機能は必須)
 ④個人とcookieの紐付け機能
 ⑤展示会やセミナーなどのリード獲得元管理(キャンペーンやプロモーション単位の管理)
 ⑥リードマージ・パージ機能(名寄せ)
Step2▼リード管理を効率化するための機能
 ⑦Webフォームからのリード自動取り込み機能(問合せ、見積り、セミナー、アンケートなどの各種フォーム)
 ⑧メール配信停止フラグ管理(複数管理必須)
Step3▼アクションを自動化するために必要な機能
 ⑨リードの条件抽出機能(保存機能含む)
 ⑩スコアリング機能(重み付けまたは、フロー条件時に必須)
 ⑪コンテンツ出しわけ機能(パーソナル機能やレコメンドなど含む)
 ⑫シナリオ・フロー設計
 ⑬シナリオスケジューリングと強制停止機能
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Step4▼営業とのパイプラインを繋ぐ機能
Step5▼ROMIを算出するための機能
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などがあります。※国産、海外ツール全て含む

 他にも、「コール管理システムとの連携」や、「セミナー管理システムとの連携」、「OCR取り込み機能連携」など、システム連携の要望は多々ありますが、ナーチャリング実行時にはフラグ管理やリード管理のI/Oで代用することで充分です。
 最初に取り組むべき内容はStep1の基本機能です。※Step2以降のマーケティングオートメーションについて知りたい方は、直接ご連絡ください。

リードデータ管理について
 リード管理(①)において、どのような情報を管理するのかデータ項目の定義は最初に行いましょう。全社共通で使うのか、部署(商材)単位で使用するかによって管理すべき範囲が異なります。テーブルを分けておき、全社共通データと事業部個別情報として階層構造でデータを保持できるのが理想です。ただし市販ツールで提供されている基本的な機能では実現できないため、個別カスタマイズになります。※個別用にカラムを自由に追加できると現場の使い勝手は良いですが、年月と共にデータ管理が煩雑になりますので気を付けましょう。
 また、一部の情報が欠落したリードでも、まずは一元的に管理しましょう。メルマガ登録など名前やメールアドレスしか分からないリストも、後で展示会やセミナーで集めた名刺を取り込む際(①)、名寄せ(⑥)で企業情報がマージされることがあります。さらにマージする際には、獲得元のデータは時系列(⑤)で管理しましょう。ユーザ単位にいつ、どこで接点があり、どこで獲得したリード情報なのかが把握できます。尚、市販ツールはデータフィールド数によって課金されるものが多いため、常にリードDBの運用は必要です。
 何の情報をキーに名寄せするかはツールによって異なりますが、海外ツールの場合は「メールアドレス」のみが多いです。最近は、資料ダウンロードは個人のgmail、セミナー申込みは会社のメールアドレスという行動パターンが多くなってきているため、企業名+名前(よみ)など複数のキーで名寄せでき、メールアドレスを複数管理できるのであればベストです。

個人特定は2方式
 次に行動トラッキング(②)ツールと、個別メール配信(③)について紹介します。ナーチャリングシナリオを実行に移す場合、興味がありそうな見込み客に個別メールを送り、誰がサイトに来訪し資料をダウンロードしてくれたのか、一般的なアクセス解析ツールで特定することは、不可能ではないですが相当な作業量になります。
――エクセルで見込み客リストを抽出し、メール配信時にパラメ―タ(ID)を付け配信ツールにセットし、アクセス解析ツールでリファラ情報からセッションを特定し、ダウンロード時のフォーム内容で個人を特定する・・・・ 気の遠くなるようなことを地道に行っている企業に、今まで何社かお会いしました。このような非効率な作業はツールで解決しましょう。

現時点で、個人を特定する方法(④)は、以下の2方式しかありません。
 A:フォーム通過時にリードデータとcookieを紐付ける
 B:メールアドレス単位にユニークなパラメータを付与し、クリックによってcookieを紐付ける

 つまり、この機能さえ実装できれば、市販ツールを組み合わせなくともスクラッチで開発できてしまいます。
 注意しないといけないのはBの方で、ユニークなリードに対して複数のcookieがあった場合のマージです。例えば、Aさんに送ったメールにパラメータIDを付与したにも関わらず、メールが転送されて、別ブラウザ(Bさん)が閲覧すると、その行動はAさんの行動として保存されます。しかし、仮にBさんがコンバージョン(フォーム通過)した際に、どうマージするのか、という問題です。ツールによって仕様が変わりますので確認しましょう。
 特に、国内の場合はフォーム経由のリードを管理(⑦)していない企業が多く、展示会やセミナーで集めた名刺を元にナーチャリングしたいという要望が多いため、上記のような課題(ゴミデータ)が溜まってしまうこともあります。

ツールの組み合わせ例
 海外のマーケティングオートメーションツール(キャンペーン管理ツール)は、この数年でIBM(Unica社)、Oracle(Eloqua)、Microsoft(MarketingPilot)、Adobe(Neolane)、SFDC(ExactTarget(pardot))、Teradata(Aprimo)がそれぞれ買収しているため、恐らく年明け(2014年)から国内でもメジャーになってくるでしょう。
 しかし、今まで国内に、『リードナーチャリングを実行する上で必要な機能を搭載したツール」が皆無だったため、国産ベンダーの組み合わせで代用したケースがあります。以下に、その組み合わせ例を紹介します。
※セールスフォースにAppExchangeでのマーケティング個別機能(国内ベンダー開発)を追加して運用している企業も多いですが、ここでは国産ベンダーの組み合わせに限定させて頂きます。

※弊社はどのベンダーとも代理店契約はしておりません。あくまで中立的な立場です。
A社(行動履歴)ITコミュニケーションズ社シナプス+(メール)パイプドビッツ社SPIRAL
B社(名刺管理+メール)三三社Link Knowledge+(行動履歴)独自開発
C社(名刺管理+メール)キヤノンエスキースシステム社アルテマブルー+(行動履歴)シナプス
D社(リード管理)独自開発+(名寄せ+メール+行動履歴)シャノン社マーケティングプラットフォーム
E社(リード管理)独自開発+(行動履歴)キーポート・ソリューションズ社SiteTracker+(メール)旧エイケアシステムズ社(現エクスペリアンジャパン社)MailPublisher

 上記は基本的な環境のため、スコアによるコンテンツの出しわけや誘導、シナリオ・フローの自動実行といった「Step3:アクションを自動化するために必要な機能」は無く、現場でのシナリオ実行は運用で回しています。デジタルマーケティングに全く取り組んでいない企業、Webサイトにコンテンツが少ない企業やリード件数が少ない企業、営業組織でターゲット顧客が見えている企業(新規企業を狙わなくても良い業界)、展示会やセミナー・テレコールなどでリアルナーチャリングを行っている企業では、構築例のような組み合わせだけで充分かもしれません。

自社にとってどのような環境を構築すべきか、社内各部署と議論・調整してからツール選定をしましょう。
# 次回は、リードのホット度合い(案件の見込や確度)をどのように探るのかです。