コンテナ型データセンターとは~特徴や注意点について解説~ 第12回 25年09月 / 最終更新:2025.09.01
目次
クラウドサービスやIoTの普及により、膨大なデータを処理・保管する「データセンター」の役割はますます重要になっています。
そんな中で、近年注目を集めているのが、「コンテナ型データセンター」です。これは、海上輸送用のコンテナをベースに、サーバや冷却装置、電源設備などを搭載して構築した、移動可能なデータセンターのことを指します。
本コラムでは、コンテナ型データセンターの特徴や基本的な構造、従来型データセンターとの違い、そして導入に際しての注意点まで解説します。
コンテナ型データセンターとは
コンテナ型データセンターが国内で本格的に登場したのは2008年ですが、最近になって再び注目されるようになりました。
ここでは、コンテナ型データセンターが再び注目されるようになった理由や、基本的な構造などを解説します。
参考:エコ&クラウド時代のデータセンターの姿
https://www.taisei-techsolu.jp/solution/dc/data_center_eco&cloud2.html
コンテナ型データセンターが注目されている理由
コンテナ型データセンターは2018年以降、5GやIoTの普及により、エッジコンピューティングの需要が拡大したことで注目を集めるようになりました。さらに、新型コロナウイルスの影響で、ITインフラの需要が急拡大したことによって、仮設や臨時で運用できるデータセンターの需要が高まった背景もあります。

また、生成AIの普及もコンテナ型データセンターが再注目されるようになった一因です。生成AIの利用には大量の演算資源が必要なため、こうした需要に素早く対応できるITインフラとしてコンテナ型データセンターの需要が高まっています。
コンテナ型データセンターの構造
コンテナ型データセンターは、その名の通り「海上輸送用のコンテナ」をベースに設計していることが一般的です。コンテナ内には、サーバラックや電源設備、空調システムや消火設備が搭載されます。
コンテナ型データセンターは必要な設備があらかじめ搭載されている「プレハブ構造」になっているため、設置場所では電源とネットワーク接続をすれば、すぐに運用を開始できます。また、複数のコンテナを組み合わせることで、用途に応じた構成変更や性能拡張が比較的容易にできる点もメリットです。
コンテナ型データセンターの特長
コンテナ型データセンターは、海上輸送用のコンテナをベースに設計しているため、短期間の構築や移設が可能といった特長があります。
ここでは、それぞれの特長について詳しく解説します。
短期間で構築が可能
コンテナ型データセンターは、あらかじめ工場で内部構成を完成させた状態で出荷されるため、短期間で構築できることが大きな特長です。設置場所さえ確保できれば、数週間から数ヶ月で稼働開始できます。
従来型のデータセンターは一般的に、土地の取得や造成、建築確認申請、インフラ工事などに長い時間を要しますが、コンテナ型データセンターは、これらの工程を大幅に簡略化できるのが大きなメリットです。
そのため、災害発生時の臨時ITインフラとしての活用や、突発的なシステム拡張の対応など、スピード感を求められる状況では有効な選択肢となります。
スケーラビリティが高い
コンテナ型データセンターは、その高いスケーラビリティも特長的です。
たとえば、初期導入時は必要最小限の構成にして、運用状況や事業の成長に合わせて、後からユニット単位でコンテナを追加することが可能です。
従来型のデータセンターの場合は、増設するために建築構造や電源容量の見直しが必要になることが多く、柔軟な対応には限界があります。しかし、コンテナ型は構造がモジュール化されているため柔軟な対応が可能であり、システム負荷やユーザー数の変動にも段階的に対応できる点が強みです。
移設・再利用が可能
コンテナ型データセンターは、コンテナをベースとしているため、トラックやクレーンを利用すれば、比較的簡単に別の場所へ移設することができます。これにより、期間限定のプロジェクトや実証実験、イベント用途など、一時的な需要にも柔軟に対応できます。
また、一度使用したコンテナは回収して別の拠点で再活用できるため、設備投資を抑えることができ、コストパフォーマンスにも優れています。
省エネ設計がしやすい
コンテナ型データセンターは、構造がコンパクトで短期間の構築が可能なため、最新の冷却システムや省エネ設計を取り入れやすいというメリットがあります。
たとえば、外気冷却や液冷など、高効率な冷却方式を導入することで、電力消費の削減を実現します。

従来型のデータセンターは、施設全体の空調や設備に多くの電力が必要となり、エネルギーの無駄が生じやすい傾向にありますが、コンテナ型データセンターは、小規模単位での運用が可能です。必要なリソースだけを稼働させることで無駄のないエネルギー活用を実現します。
このように、コンテナ型データセンターは省エネ設計がしやすいことから、持続可能なITインフラとしても注目されています。
コンテナ型データセンターの注意点
コンテナ型データセンターは多くのメリットがありますが、万能というわけではありません。
ここでは、コンテナ型データセンターの注意点について解説します。
セキュリティ対策に課題がある
コンテナ型データセンターは、従来型データセンターに比べて、建物自体の強度や侵入防止対策に制限があるため、物理的なセキュリティが劣ります。さらに、一時的な設置や分散型の運用が可能な反面、常駐スタッフの配置や監視体制、入退室管理などの徹底が難しくなることも多く、人的なセキュリティリスクが高まる傾向にあります。
こうしたリスクに対応するには、監視カメラやセンサーの強化、フェンスやアクセス管理ゲートの設置といった物理セキュリティ対策を強化する必要があり、その分の設備投資や運用コストが発生します。
また、豪雨や積雪、台風といった気候変動の影響を受けやすい構造であることから、可用性の面でも課題があります。
設置スペースを確保する必要がある
コンテナ型データセンターは、ビル型データセンターに比べて「高さ」によるスペースを確保することが難しくなります。コンテナを縦に積んで設置する方法もありますが、耐震性やメンテナンス性の面から制限があります。
そのため、増設する場合は水平方向にコンテナを拡張する必要があるため、広大な設置スペースを確保しなければなりません。
また、ユニット単位で設置するため、設置スペースまでの搬入経路が狭いなど、コンテナサイズに対応していない場合、設置自体が難しいケースがあります。
「コンテナ型データセンター」のまとめ
コンテナ型データセンターは、納期の短さや柔軟性の高さ、そしてエネルギー効率の高さから、次世代のITインフラとして注目されています。特に、BCP対策や、一時的な用途、突発的なリソースの確保をする場合は、非常に効果的な選択肢です。
一方で、コンテナ型データセンターにはセキュリティ対策や可用性、設置環境への配慮といった面で課題が伴います。そのため、安定した運用や厳格な情報管理を必要とする用途には、従来型のデータセンターが適しています。
データセンターを選択する際は、それぞれの特長や注意点をしっかりと見極めた上で、導入目的や運用方針に応じて最適な選択をすることが重要です。
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