ソブリンクラウドとは? データ主権の観点から国内データセンターを選ぶ理由 第22回 26年10月 / 最終更新:2026.10.16

クラウドサービスの普及により、多くの企業がシステムやデータをクラウド上で管理するようになりました。しかし、近年ではクラウド上のデータやシステムが国外の法規制の影響を受け、データの開示などを要求されるリスクも懸念されています。

このような状況から、データやシステムの主権を自国の枠内で管理する「ソブリンクラウド」が注目されています。また、ソブリンクラウドを実現する手段の一つとして、国内データセンターを活用する動きも広がっています。

本コラムでは、ソブリンクラウドの基本的な考え方や、国内データセンターを選ぶ理由について解説します。

ソブリンクラウドとは

ソブリンクラウドは、特定の技術そのものを指すのではなく、クラウドの管理・運用における主権確保の考え方を表す言葉です。
ここでは、ソブリンクラウドの考え方や、ガバメントクラウドとの違いなどを解説します。

ソブリンクラウドの考え方

ソブリン(sovereign)は「主権」を意味する言葉です。
つまり、ソブリンクラウドは「データやシステムの主権を自国の管理下に置くクラウド」といった考え方になります。

ソブリンクラウドで重要なのは、単にデータが国内に保存されているかどうかではなく、どこの国の事業者が管理しているか、どこの国の法律が適用されるのかという点です。

たとえば、データが国内のデータセンターに保存されていたとしても、運営主体が海外企業である場合、その企業の本国における法規制の影響を受ける可能性があります。ソブリンクラウドはこうしたリスクを抑え、国内法に基づいて安全にデータを管理・運用することを目的としています。

ソブリンクラウドとは?の説明をまとめた画像

ガバメントクラウドとの違い

ソブリンクラウドは、ガバメントクラウドと混同されることがありますが、両者は目的が異なります。

ガバメントクラウドとは、政府や地方公共団体などが共通して利用するクラウドサービスの利用環境です。ソブリンクラウド同様にセキュリティや法令遵守の観点からデータ主権に一定の配慮はなされているものの、主な目的は政府システムの標準化や業務の効率化にあります。

一方、ソブリンクラウドは、データやシステムの主権確保そのものを目的として設計されている点に本質的な違いがあります。

ソブリンクラウドが求められている理由

ソブリンクラウドが求められるようになった背景には、クラウド上のデータに対して国外の法規制が適用されるリスクが顕在化していることがあります。

たとえば、2018年に制定された米国のクラウド法(CLOUD Act)では、米国のクラウド事業者が管理するデータについて、保存場所にかかわらず開示を求められる可能性があり、経済安全保障上の懸念の一つとされています。

さらに、GDPR(EU一般データ保護規則)の施行により、各国でデータ保護に関する規制が強化されました。その結果、データを自国の法制度のもとで適切に管理したいというニーズも高まっています。

ソブリンクラウドにおける主権の考え方

ソブリンクラウドでは、単にデータを国内に保管するだけでなく、データ・システム・運用の3つの主権を確保することが重要です。
ここでは、それぞれの主権の考え方について解説します。

データ主権

データ主権とは、保管されているデータに対して誰がアクセスできるか、どこの国の法律が適用されるのかを示す考え方です。

クラウド環境では、データが国外に保存されたり、海外企業によって管理されたりすることで、意図しない法規制の影響を受ける可能性があります。そのため、データを自国の法制度のもとで管理し、適切に統制できる状態を確保することが重要です。

システム主権

システム主権とは、システムやアプリケーションの構成・制御を誰が担うのかを示す考え方です。クラウドサービスでは、インフラやソフトウェアの一部がクラウド事業者側で管理されるケースがあるため、利用者が完全にはコントロールできない領域が存在します。

ソブリンクラウドでは、こうしたシステムの構成や設定についても主体的に管理・制御し、自社のポリシーに沿った形で運用できることが求められます。

運用主権

運用主権とは、管理や障害対応、セキュリティ対策などの運用プロセスを誰が担うのかを示す考え方です。特に、インシデント発生時には迅速かつ正確な対応が求められます。

運用主体が海外にある場合、言語や時差、法制度の違いによって対応が遅れる可能性があります。一方で、国内で運用が完結する環境であれば、関係者とスムーズに連携し対応することができます。

データ・システム・運用の三つの主権を想起しやすくするためのイメージ画像

国内データセンターを選ぶ理由

ソブリンクラウドを実現するためには、さまざまな理由から国内データセンターを選ぶことが推奨されます。
ここでは、国内データセンターを選ぶ理由について解説します。

法的なリスクへの対応

国内データセンターを利用する最大の理由は、データの保管と運用を国内で完結できることです。国内の事業者が運営するデータセンターを利用することで、海外の法規制に基づくデータの開示や、差し押さえを求められるリスクを低減できます。

また、日本の個人情報保護法や各種ガイドラインに準拠した形でデータを管理できるため、コンプライアンス対応の面でもメリットがあります。

データの所在の明確化

海外のデータセンターでは、冗長化や分散配置によってデータが複数の地域に分散されることがあり、所在が不明確になるケースがあります。

国内データセンターを利用すれば、データの保管先をコントロールしやすくなるため、監査や内部統制への対応が容易になります。これは、企業としての説明責任を果たすうえでも重要な要素です。

地政学的なセキュリティリスクの回避

近年では、国際情勢の変化に伴い、サイバー攻撃や経済制裁といった地政学的リスクがITインフラにも影響を及ぼしています。特定の国のインフラを標的とした攻撃や、サプライチェーンの分断といった事例も報告されています。

国内データセンターを利用することで、こうした地政学的なリスクの影響を受けにくくなり、より安定した運用環境を確保することができます。

為替リスクの低減

また、安定したシステム運用を維持するうえでは、コストの予測性も重要な要素です。
海外クラウドサービスは外貨建てで課金されることが多く、為替レートの変動によってコストが大きく変動する可能性があります。特に近年は円安の傾向が続いており、コストが増加するケースが発生しています。

国内データセンターを利用することで、こうした為替の影響を抑え、運用コストの予測性を高めることができます。

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まとめ

ソブリンクラウドは、海外の法規制による強制的なデータ開示などのリスクを避けるために重要な考え方とされています。その実現においては、国内の事業者が運営するデータセンターを活用し、データ主権やシステム主権、運用主権などを保持する必要があります。

なお、クラウドサービスの利用において、国内リージョンを利用すれば安全というわけではないので注意が必要です。たとえ国内リージョンを利用していても、運営主体が海外企業である場合には、その企業の本国法の影響を受ける可能性があります。

重要なデータやシステムを管理・運用する際には、主権を適切に確保するといった観点から、国内の事業者が運営するデータセンターを選定しましょう。

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