ハイパフォーマンスコンピューティングのトレンド 第17回 18年04月 / 最終更新:2018.04.06

こんにちはー。野田貴子です。今回はOpenStack関連のコラムで面白いものがあったので意訳版をお届けします。昨今、OpenStackの注目度が高まっており、OpenStack開発者メーリングリストやコラムをチェックしている人も多いと思います。英語が苦手な方にとっては、日本語で要約版があると助かるのではないかと考え、日本語意訳したものをお伝えすることにしました。
興味がある方はご覧ください。海外動向を理解する上での参考になれば幸いです。

###

ハイパフォーマンスコンピューティングは35兆~36兆ドル規模の市場ですが、ほとんどの人はこの市場規模は学界や公共機関によるものだと考えています。

それを否定したのは、HPC諮問委員会のスタンフォードカンファレンス最近講演したIntersect 360社の主席研究官であるChristopher Willard氏です。

HPCの現在の成長率(インフレより若干良い3.5%)は商業市場によって引き起こされ、今後5年間はこの傾向が続くと同氏は予測しています。

Willard氏は「商業産業のサイトは勢いを増し、ハイパフォーマンスコンピューティングに益々熱心になり、より多くのお金を費やしています。」と話し、現在のHPCの55.5%が民間で使用され、18%が学問、26%が政府に使用されていると言及しています。

まずはコンピューター、次に洗濯機

商業的な成長に注目すべき分野は化学と金融です。化学の分野の成長は、「洗濯用洗剤のような、消費者向け製品の製造といったものが由来しています」とのことです。彼はそれを「化学の奇跡(ケミカル・ミラクル)」と呼んでいます。金融業界も成長するでしょう。「この区分には、価格設定・リスク分析・取引を担っているウォールストリートだけでなく、保険業界や、主にお金の移動を扱っている一般的な事業も含まれています。」

 

HPCの商業面の成長は、他の面の成長よりも伸び代があります。Willard氏らは企業を調査し、今後数年間でどれだけのコンピューティングパワーを使用すると考えられているのかをまとめました。今必要なコンピューティングパワーを十分備えていると回答したのは15%でしたが、65%の企業は5年以内に必要な量が倍増するだろうと答えました。回答者は今の5倍から10倍のコンピューティングパワーを使う可能性もあると確信していました。100倍のコンピューティングパワーを使うかどうかは判断しかねているようでした。

「どんな種類の市場でも、投入された製品すべてを受け入れられるほどの市場はほとんどありませんが、HPCはそれができる数少ない例の1つなのです。」

ハイパースケールへのシフト

「ハイパースケールの市場は、一般的なIT投資とは異なり、自由にスケールできるウェブに接続されたアプリケーションインフラで構成されています。」とWillard氏は定義しています。Intersect 360のチームは、「市場が大きくなり、他の市場の成長を妨げるようになる」まで、長年この市場に注目してきました。

ハイパースケールはHPCと同じように素晴らしい成長を遂げています。「HPCは科学技術を使い切るまでシステムを成長させます。ハイパースケールはインターネットを使いたいと思っている世界中の人々を満足させるまでシステムを成長させます。」

同氏は、この現象は一般的なビジネスコンピューター上でウェブに接続されたアプリケーションを動かしているウェブサイトだけの問題ではないことを明確にしています。ハイパースケールは単なるスケーラビリティではありません。与えられた時間の中でどれだけの量の作業を行えるのか、巨大ジョブと多重ジョブではどちらがより多く作業をこなせるのか、そういったことを試したい単身の科学者やユーザーが、初心者のように戸惑うことはありません。

HPCとハイパースケールの比較点のラストは、同氏が「本当に恐ろしい」と言う、予算に関するものです。大規模なスーパーコンピューター施設では約1億ドルの予算が必要ですが、最大規模のハイパースケール施設では10億ドルもの予算が必要です。同氏は「つまり、コンピューター市場全体を再構築するために十分なお金がここにはある」と結論づけました。「技術の定義における采配を振るっているのは、ハイパースケールに携わる人々で、彼らはHPC側に勝っています」と。

ディープラーニング

同氏によると、HPCセンターの約75%がディープラーニングと人工知能を行っているとのことです。「我々はディープラーニング市場を2兆〜2兆5000億ドル規模だと見ています。」

多くの人とは異なり、Willard氏はこの流行語をわかりやすく取り上げています。同氏が言うには、ディープラーニングは8歳やら10歳やらの子供にペイントスプレー缶を与えて部屋に一人にするようなものです。10分後に様子を見に戻ったら、すべてがペイントで覆われているのです。塗っておいてほしいと思っていたものはすべて塗られていますが、それ以外に壁も塗られ、子供自身もペイントまみれになります。

「私たちは世界中の科学者を集め、ディープラーニングという名のスプレー缶を渡しました。彼らはディープラーニングを使ってソリューション空間全体を塗ってしまいました。」悪いことではないのですが、ほとんどの場所で塗るべきではない箇所が1つ2つ余計に塗られていました。同氏は今後2年以内にこの領域が倍増し、その後適度に成長し、おそらく5年以内で収縮すると読んでいます。

「ディープラーニングは多くの作業とコンピューティングパワーを必要としますが、ある言語の学習セットを終了したあとにどれだけの時間再学習しなければならないのかはまだわかりません。このプロセスは完了する必要が本当にあるのでしょうか。一年ごとなどに変更を取り入れて微調整するだけでだめなのでしょうか。」

同氏はまた、HPCを利用する大企業の概要や、彼らの現在の市場シェアと今後の見通しについても説明しました。これらの企業には、この業界のリーダーであるHPE、Dell、Lenovo、Huawei、Fujitsuが含まれ、ストレージ収益モデル(Dell EMC NetApp、IBMなどの)も見ることができます。

全42分のこのトークはYouTubeで公開されています。

※本コラムは以下の文章を意訳したものです。

引用元 
http://superuser.openstack.org/articles/trends-high-performance-computing/

※本コラムは原文執筆者が公式に発表しているものでなく、翻訳者が独自に意訳しているものです。