データセンターの耐震について 第02回 24年03月 / 最終更新:2024.03.28

地震などの自然災害が多い日本では、重要なデータや機器を災害から保護するための対策が求められます。
災害対策のひとつとしてデータセンターを活用する方法があります。
データセンターは災害に耐えられるように堅牢なファシリティが求められるため、地震に強い建物構造や電源の冗長設備など様々な災害対策をしています。

本記事では、データセンターに採用されている耐震構造の違いや、災害発生時に備えた設備について詳しく解説していきます。

 

データセンターを活用した災害対策

近年ではサーバやネットワーク機器などに加えて、それらに保存されているデータも重要な資産になります。
大規模地震などの災害から情報資産を守るために、建物の耐震強化や、災害時に必要な設備を導入するといった方法もありますが、莫大なコストが必要となり、個々の企業がこれらの対策を行うことは困難です。

そこで、データセンターを活用することで、コストを抑えつつ重要なデータや機器を安全に保存・運用するという方法を選択する企業が増えてきました。
データセンターは耐震や免震などの地震に強い建物構造になっており、電源の冗長設備や防火設備も備わっています。そのため、ハウジングやホスティングなどのデータセンターサービスを利用することは、情報資産を災害から守るための有効な手段となります。

データセンターは施設ごとに耐震性能や備えている設備などが異なるため注意が必要です。
耐震性能や備えている設備のレベルについては利用コストとトレードオフとなっているケースも見られるため、情報資産の重要度と利用コストのバランスを考えて検討をしましょう。

データセンターの耐震、制振、免震の違い

地震対策には「耐震」構造、「制震」構造、「免震」構造があり、データセンターにより採用されている構造は異なります。
以下にそれぞれの特徴を解説します。

データセンターの耐震

耐震は大きな地震が発生しても耐えることができる頑丈な建物構造のことを指し、建物の倒壊を防ぐことを目的としています。
耐震の場合、地震の規模に比例して建物内の揺れや衝撃も大きくなるため、データセンター内に設置されている機器への影響も大きくなります。
地震の規模によってはデータセンター内の固定されていない機器が落下したり、飛び出したりする可能性があります。
サーバなどの重たい機器が飛び出した場合には、機器の破損だけではなく、重大な人身事故につながる危険性がありますので、安全のために必ず機器を固定する必要があります。

データセンターの制震

制震は制震ダンパーなどの制振装置を取り付けて地震による揺れや衝撃を軽減する構造のことを指します。
耐震のみの場合と比べて、揺れ幅や衝撃が軽くなるためデータセンター内の機器や建物そのものへのダメージを軽減することができます。
ただし、完全に揺れや衝撃を抑えられるわけではないため、機器の固定など安全対策をとる必要があります。
免震に比べるとコストが抑えられるといったメリットがあります。

データセンターの免震

免震は建物と地面の間に免震用積層ゴムなどの免震部材を設置し揺れを吸収することで、建物に揺れや衝撃を伝えない構造のことを指します。
地震の揺れの加速度を緩和させる免振用積層ゴムに加えて、建物の揺れの加速度を低減させるオイルダンパーを採用しているデータセンターもあり、より高い安全性を実現しています。
地震による揺れや衝撃を大幅に軽減できるため、機器や建物へのダメージを最小限に抑えることができます。
しかし、免震構造は莫大なコストがかかることや、建物の立地に条件があります。

 

UPSと発電機

地震などの災害時には変電所からの電力供給が困難になり、停電することがあります。
そのため、異なる変電所から複数系統の受電をする冗長化受電をするデータセンターもあります。また、UPSと呼ばれる無停電電源装置や非常用発電機など電源を冗長化する設備も、データセンターの災害対策では重要です。
以下にUPSと非常用発電機について解説します。

UPS(Uninterruptible Power Supply=無停電電源装置)

UPSは停電時に非常用発電機が安定した電源を供給するまで、一時的に電源を供給するための蓄電池装置です。
サーバやストレージは停電の影響で稼働中に突然電源が落ちると、システムやデータが破損してしまうことがあるため、UPSにより電力供給を途切れさせないことが重要です。
UPSはあくまで一時的な電力供給が目的であり、長時間の停電には対応できません。
バッテリー残量が少なくなると接続されている機器を安全にシャットダウンさせる機能をもつUPSもあります。

非常用発電機

非常用発電機とは、変電所からの電力供給が停止した際、代替措置として継続的に電力を供給し続けるための自家発電設備です。
非常用発電機にはガスタービンエンジン方式や、ディーゼルエンジン方式のものがあります。
近年では大型の非常用発電機が設置されているデータセンターが増えてきました。
大型の非常用発電機はガスタービンエンジン方式が多く、それら大型の非常用発電機が複数設置されたデータセンターもあります。
非常用発電機は停電信号を受けてから起動し、発電周波数が安定するまでには数十秒かかるため、その間の電力供給が途切れないようにUPSを併用する必要があります。
最新式の発電機は10秒以内に起動し、発電周波数が安定する機種もあります。
非常用発電機は数日間に渡って電力供給を持続できる機種もありますが、あくまで非常用のため永続的に電力供給ができるわけではありません。

データセンターの火災対策

地震が発生した際には、揺れや衝撃だけではなく火災などの二次災害が発生する可能性があります。
データセンターでは、サーバやネットワーク機器などの電子機器を扱っている性質上、スプリンクラーなど液体を使った消火設備との相性は良くありません。
そのため、多くのデータセンターでは窒素ガスなど不活性ガス消火設備が採用されています。不活性ガス消火設備は火災が発生した場合でも、データセンター内の機器が継続利用できる可能性を高めます。以前は、ガス噴射時に発生する音が大きく、音圧で機器に障害が発生するケースもありましたが、最近では静音性の高いガス消火設備が登場しています。
また、わずかな煙でも感知することができる高感度煙感知器を採用しているデータセンターもあります。

 

データセンターのBCP対策

日本で大規模な地震が頻発していることから、BCPへの関心が高まっています。
BCP(Business Continuity Plan)とは事業継続計画のことです。
事業継続計画は自然災害やテロ攻撃、感染症の流行など緊急事態に遭遇した際、ビジネスへの損害を最小限に抑えるため、有事の事業継続や早期の復旧を平時から策定する取り組みです。
前述したように、データセンターを活用して災害に備え、情報資産を守ることもBCPのひとつです。しかし、どんなに堅牢なデータセンターでも100%災害に耐えられるという保証はありません。
災害対策としてデンターセンターを活用する際は、耐震構造や設備だけではなく、災害が発生する確率が少ない地域であるかどうかなど立地を考慮する必要があります。
また、複数拠点のデータセンターにシステムを分散するDR(ディザスタリカバリ)や、遠隔バックアップを行うことでBCPの確実性を向上させることができます。

 

データセンターの耐震についてのまとめ

データセンターは地震対策をはじめとした、様々な災害への対策をしていることについて解説しました。
災害対策としてデータセンターを活用する際は、有事にも守るべき情報資産を整理し、コストバランスを考えながら検討する必要があります。
また、前回記事で紹介したように、データセンターを活用したサービスには災害対策以外のメリットもあります。
災害対策に加えて、提供されているサービス内容やコストなどを確認して、自社の利用目的に合ったデータセンターを検討しましょう。

 

鈴与シンワートは東京、大阪・北陸・九州・沖縄にデータセンターを展開し、ハウジングサービスやクラウドサービスを提供しています。
データセンタークラウドサービスの利用を検討されている方は、是非お気軽にご相談ください。

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