ランサムウェアの被害と最新の対策 第21回 26年07月 / 最終更新:2026.07.23

ランサムウェアは、企業を狙ったサイバー攻撃の中でも特に大きな被害をもたらします。ランサムウェアに感染するとシステムやデータが利用できなくなるだけでなく、事業停止や情報漏えいなど、深刻な影響を引き起こす可能性があります。

また、近年は攻撃手口も高度化しており、企業にはセキュリティ対策の強化やBCP(事業継続計画)の見直しが求められています。 本コラムでは、ランサムウェアの攻撃手口や被害の現状を整理するとともに、企業が取り組むべき最新の対策について解説します。

進化するランサムウェアの攻撃手口

ランサムウェアの攻撃手口は進化しており、二重脅迫型のランサムウェアや、データを暗号化しないノーウェアランサムも登場しています。
ここでは、「二重脅迫型ランサムウェア」と「ノーウェアランサム」の攻撃手口、侵入経路について解説します。

二重脅迫型ランサムウェア

現在、主流となっている攻撃手口が「二重脅迫型ランサムウェア」です。ランサムウェアは、システム内のデータを暗号化し、復号するための鍵と引き換えに身代金を要求します。二重脅迫型ランサムウェアは、データの暗号化に加えて、事前に機密情報を窃取し、「身代金を支払わなければ情報を公開する」といった脅迫を組み合わせる手口です。

二重脅迫型ランサムウェアの場合、暗号化されたデータを復旧できたとしても、情報漏えいのリスクが残ります。攻撃者は「窃取したデータを公開サイトなどに掲載する」と脅すため、企業にとってはブランド毀損や取引先への影響など、より深刻なリスクを伴います。

ランサムウェアに感染したPCのイメージ
ランサムウェア感染したPCのイメージ

ノーウェアランサム

近年では、暗号化せずにデータの窃取と公開のみで身代金を脅迫する「ノーウェアランサム」による被害も増加しています。これは、企業がバックアップなどの対策を強化したことで、「データ暗号化」による脅迫の効果が薄れたことが背景にあります。

ノーウェアランサムは、データの暗号化というプロセスが省略されるため、攻撃スピードが速いことが特徴です。また、目に見えた変化が発生せず、正常なアクセスとの見分けが付きにくいため、検知が困難です。

ランサムウェアの侵入経路

ランサムウェアは、さまざまな侵入経路からの感染が報告されています。特に多いのがVPN機器の脆弱性を悪用して侵入するケースです。次いで、リモートデスクトップ(RDP)の不正利用やフィッシングメールからの侵入が挙げられます。

攻撃者は、こうした経路を利用して企業のネットワーク内部へ侵入した後、権限の奪取や内部調査をしながら感染範囲を拡大していきます。その後、重要なサーバやデータにアクセスし、最終的にランサムウェアを実行するケースが多くみられます。

ランサムウェア被害の現状

ランサムウェアは依然として企業にとって深刻な脅威であり、IPAの「情報セキュリティ10大脅威2026」では、「ランサム攻撃による被害」が6年連続で1位に選出されました。
ここでは、ランサムウェアの被害件数の推移や、ランサムウェアによって発生した大規模システム障害について解説します。

ランサムウェア被害件数の推移

警察庁が公表している統計によると、日本国内におけるランサムウェアの被害件数は近年高い水準で推移しています。特に、企業や団体を狙った被害が多く、業務停止や情報漏えいなどの深刻な影響が報告されています。

被害の特徴は、製造業や物流、サービス業など幅広い業種で発生している点です。また、大企業だけでなく中小企業も標的となるケースが増えており、企業規模を問わず、ランサムウェアへの対策が求められています。

さらに、攻撃者の組織化も進んでおり、ランサムウェアをサービスとして提供する「RaaS(Ransomware as a Service)」の存在も被害拡大の要因となっています。

出典/参考:警察庁サイバー警察局「令和7年上半期におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」
https://www.npa.go.jp/publications/statistics/cybersecurity/data/R7kami/R07_kami_cyber_jyosei.pdf

大規模なシステム障害の発生

2025年は大手企業で立て続けにランサムウェア被害による大規模システム障害が発生しました。

例えば、アサヒグループホールディングスでは、グループ企業がサイバー攻撃を受けたことでシステム障害が発生し、受注・出荷を含む広範な業務に影響が出ました。
また、アスクルでもサイバー攻撃による基幹システムの障害によって、一部サービスや出荷業務の全面停止、顧客情報の流出など深刻な損害になりました。さらに、他社のECサイトが停止するなど、サプライチェーン全体に影響が波及しました。

このように、ランサムウェアによる被害は企業活動そのものを停止させるリスクがあり、復旧にも時間がかかるケースが多くあります。そのため、BCPの観点からも対策の検討が必要です。

最新のランサムウェア対策

ランサムウェアの被害を防ぐために、企業には多層的なセキュリティ対策が求められています。ここでは、企業が取り組むべき代表的な対策について解説します。

セキュリティ対策をしているPCのイメージ画像

基本的なセキュリティ対策の徹底

ランサムウェア対策は、OSやソフトウェア、ネットワーク機器を常に最新の状態に保つなどの基本的なセキュリティ対策の徹底が重要です。実際に、ランサムウェアに限らず、サイバー攻撃の多くは最新にアップデートされていない「放置された脆弱性」を悪用するケースが多くなっています。

また、VPN機器やリモートアクセス環境には多要素認証を導入するなど、認証強化も重要です。加えて、EDRやNDRなどを導入し、マルウェアの侵入を検知する仕組みづくりが必要です。

データの窃取や公開を目的とした攻撃も増えているため、アクセス管理やログ監視の強化、暗号化ツールの導入など、情報漏えいのリスクを低減する取り組みも検討しましょう。

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社内教育の実施

ランサムウェアに感染する原因の一つとして、従業員がフィッシングメールの不正リンクや添付ファイルを開いてしまうことが挙げられます。

そのため、従業員のセキュリティ意識を高めることも重要な対策です。具体的には、セキュリティ教育の実施や標的型メール訓練などを実施し、従業員が不審なメールやリンクを見分けられるようにすることが求められます。特に、最近のフィッシングメールは巧妙になっており、正規のメールと見分けることが難しくなっているため、注意が必要です。

BCPの見直し

ランサムウェアによるシステム障害は、企業活動に大きな影響を与える可能性があるため、万が一の事態に備えてBCPを見直すことも重要です。

例えば、バックアップや代替システムを外部のデータセンターに保管しておくことで、リスクを分散でき、有事の際に迅速な復旧を実現できます。

データセンターでは、高度なセキュリティ対策サービスや安定したインフラが提供されているため、バックアップ環境や代替システムの運用基盤として活用する企業も増えています。こうした外部サービスを適切に活用することで、より実効性の高いBCP対策を構築できます。

まとめ

ランサムウェアは現在も企業にとって深刻なサイバー脅威の一つであり、二重脅迫型やノーウェアランサムなど攻撃手口が進化し続けています。被害が発生すると大規模なシステム障害や情報漏えいなど、企業活動に大きな影響を及ぼす可能性があります。

そのため、OSやネットワーク機器の更新、アクセス管理の強化、社内教育など基本的なセキュリティ対策を徹底することが重要です。

また、万が一の被害に備えてBCPの観点から対策を見直すことも欠かせません。外部データセンターを活用したバックアップや代替システムの整備など、事業継続を意識した対策を進めていくことが重要です。

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