パブリッククラウドのセキュリティは低い?安全に使う方法を解説します! 第05回 23年11月 / 最終更新:2024.06.06

法人向けデータセンターサービス・クラウドサービスの鈴与シンワート

現代のビジネスにおいて急速に普及しているクラウドサービス。その中でもAWSやAzureをはじめとするパブリッククラウドは、その導入の早さや柔軟性の高さから人気を集め、利用者が年々増加しています。

一方でクラウドサーバ上に大事なデータを保存することに不安があると、パブリッククラウドの利用をためらうケースもあるようです。しかし、本当にパブリッククラウドのセキュリティは低いのでしょうか?

先に結論をお伝えすると、パブリッククラウドにはセキュリティ面で注意が必要な点も一部ありますが、正しく対策すれば安全かつ便利に利用が可能です。本コラムでは、パブリッククラウドのセキュリティリスクと具体的な対策を解説します。ぜひ参考にしてください。

パブリッククラウドとプライベートクラウドの違い

企業がクラウドサービスを利用する際、大きく分けてパブリッククラウドとプライベートクラウドの2つがあります。パブリッククラウドは、複数の利用者が共用するクラウドサービスで、Amazon Web Service (AWS) やMicrosoft Azureなどがその代表例です。一方、プライベートクラウドは、特定の企業や組織が専用で利用するクラウドサービスです。

両者をセキュリティ面で比較すると、一般的にプライベートクラウドがよりセキュリティが高いといわれています。その理由は主に2つです。

1つ目は、自社のセキュリティポリシーに合うようにカスタマイズして構築できる点です。厳格なセキュリティ要件を持つ組織には特に適しています。2つ目は、VPNや専用回線などのセキュリティの高いネットワークを経由して接続されるため、外部からの不正アクセスに対するリスクを大幅に低減できる点です。

これらの特性から、高いセキュリティが求められるビジネスにはプライベートクラウドを利用する傾向があります。

パブリッククラウドのメリット・デメリット

ここでは、パブリッククラウドのメリット・デメリットを解説します。

パブリッククラウドのメリット

パブリッククラウドは、手間がかかるサーバの導入や、通信回線の契約などが不要であり、すぐに利用できるのがメリットです。サービス提供事業者がOSのバージョンアップやメンテナンス作業を行うため、導入・運用にかかるリソース稼動を抑えられます。

パブリッククラウドの場合、利用した分だけ料金が発生する「従量課金制」を採用しているケースもあります。自社のニーズに合わせて柔軟に利用時間を調整できるため、必要最小限のコストでの運用も可能となります。

パブリッククラウドのデメリット

パブリッククラウドは、事業者が提供するサービスの範囲内でしかカスタマイズできないため、独自のシステムを構築する際には適していないことがあります。また、既存のサービスと互換性がないサービスは、操作しにくいと感じることもあります。

さらに、システム障害やセキュリティ事故などが発生した場合に自社で迅速に対応できないというデメリットがあります。トラブルが発生した場合には基本的にサービス提供事業者側が対応します。

パブリッククラウドが適しているケース

パブリッククラウドは、コストや手間をかけずに運用を開始する場合や、スモールスタートでビジネスの成長に合わせて規模を拡大したい場合などにおすすめです。また、事業や業務が将来的に変動する可能性が高い場合や、無駄な出費を抑えるためにサービスを頻繁に変更したいと考えている場合にもパブリッククラウドは適しています。

プライベートクラウドのメリット・デメリット

続いて、プライベートクラウドのメリット・デメリットについて解説します。

プライベートクラウドのメリット

プライベートクラウドの最大のメリットは、クラウド環境を自由に設計・変更ができる点です。自社の業務に合わせて独自にシステムを構築することができます。さらに、自社のセキュリティポリシーに応じた設計が可能なため、高セキュリティ環境などを構築できるのも魅力です。

プライベートクラウドのデメリット

プライベートクラウドは、自社で自由にシステム構築できることが魅力ですが、システム構築の専門知識を持った人材を確保しなければなりません。そのため、運用コストや人的負担が増加することがデメリットです。またパブリッククラウドと比較した場合、導入・運用開始までに時間かかるケースが多く想定されます。

プライベートクラウドが適しているケース

前述したとおり、プライベートクラウドではOSやソフトウェア、回線などを自由にカスタマイズできることが特長です。特に独自のシステム環境を構築したい場合はプライベートクラウドの利用が適しています。また、企業の機密情報や顧客の個人情報など、重要度が高いデータを社内で厳重に管理したい場合も、プライベートクラウドがおすすめです。

パブリッククラウドも基本的に安全、ただし責任範囲に注意

一般的に、プライベートクラウドがより高セキュリティだといわれていますが、パブリッククラウドも各サービスプロバイダが様々なセキュリティ対策を提供しており、基本的には十分な安全性を確保することができます。AWSやAzureなどの大手サービスは、高度なセキュリティ技術と専門のチームによってサービスの安全性を維持しています。

ただし注意が必要なのは、サービスプロバイダとユーザー間でセキュリティの責任範囲が分担されていることです。この「責任共有モデル」とも呼ばれる方式では、サービスプロバイダがクラウドサービスのセキュリティ対策をし、ユーザーは自らのデータやアプリケーションのセキュリティ対策をする必要があります。

以下の図は責任共有モデルのイメージです。このようにIaaS・PaaS・SaaSなど提供しているサービスによって範囲は異なります。以下はあくまで一例なので、実際に利用する場合は、そのサービスの責任共有モデルを必ず確認してください。

図1.責任共有モデルの例

図1.責任共有モデルの例

サービスプロバイダが全てのセキュリティ対策をしてくれると誤解して任せきりにしていると、ユーザー側による設定ミスや不適切な管理が起こり、事故や情報漏洩の原因となります。正確な責任範囲を理解し、自社の責任範囲に対して適切なセキュリティ対策をすることが重要です。

パブリッククラウドのセキュリティリスクとは

では、具体的にパブリッククラウドにはどのようなセキュリティリスクがあるのでしょうか。ここでは主なセキュリティリスクを2つ紹介します。

1.インターネットで不特定多数から攻撃されるリスクがある

パブリッククラウドはその名の通り「公開」されているクラウドサービスです。一般的にはインターネットを介してアクセスします。この特性が持つ最大のリスクは、インターネットは世界中の不特定多数のユーザーに公開されていることです。これにより、悪意を持つユーザーやハッカーからの攻撃を受ける確率が高まります。

不正アクセスやDDoS攻撃、マルウェアの感染など、インターネットを通じた脅威は様々です。これらの攻撃は、サービスの停止や情報漏洩といった深刻なダメージをもたらす可能性があります。

一般的にプライベートクラウドの方がパブリッククラウドよりも高セキュリティだと言われるのは、この通信方法の差が大きく影響しています。パブリッククラウドを使用する際は、外部からのアクセスに対してより慎重な対策が必要です。

2.設定ミスによるセキュリティリスクが起きやすい

パブリッククラウドは非常に便利な一方、設定ミスにより大きなセキュリティリスクにさらされる可能性があります。その中でも、特に多いのがアクセス制限に関する設定ミスです。適切なアクセス制限が設定されていないと、想定外のユーザーや第三者からアクセスが可能となり、情報漏洩や不正操作の原因となります。

例えば、不適切なポート開放や重要なファイルの公開設定を誤ったことで全世界からアクセス可能な状態になり、情報漏洩につながった事例もあります。

また、社外からのアクセスさえ封じれば安心という訳ではありません。例えば、全ての社員に操作権限を与えてしまうと、誤って重要なデータが削除されたり、情報が改ざんされたりするリスクがあります。

このような設定ミスは一見些細な問題のように思えますが、その影響ははかり知れません。定期的な設定のチェックと、適切な教育が必要です。

パブリッククラウドをより安全に使うための対策3選

ここまでの説明で、パブリッククラウドのどういう点に注意が必要かお分かりいただけたと思います。ここからは、パブリッククラウドを安全に使うための具体的な対策を3つ紹介します。

1.セキュリティチェックを行う

人間は完璧ではないため、どんなに気をつけてもミスは避けられません。そのため、パブリッククラウドを利用するにあたり、定期的なセキュリティチェックが求められます。まずはチェックリストを作成し、設定やアクセス権限など、重要なポイントにミスや不備がないかを定期的に確認することが大切です。

さらに安全性を高めるには、サービスプロバイダや第三者によるセキュリティチェックサービスの利用を検討しましょう。これらのサービスは、専門的な知識を持ったプロがセキュリティ診断を行い、潜在的な脅威や脆弱性を明らかにしてくれます。さらに一部のサービスでは、ただ診断を行うだけでなく、セキュリティを強化するための具体的な提案もしてくれます。

前述のとおり、セキュリティインシデントはほんの些細なミスから発生します。「人の手で行った作業には必ずミスがある」という意識で対策することが大切です。

2.セキュアな閉域網を構築する

パブリッククラウドにインターネット経由で接続する際のリスク解決策として、「セキュアな閉域網」の構築が挙げられます。

閉域網とは、一般のインターネットと切り離したプライベートな通信網のことです。例えば、全ての網をインターネットVPNやIPVPNで構築したネットワークなどです。この閉域網を使用することで、外部からの不正アクセスのリスクを大幅に減少させることができます。

また現代のビジネスでは、複数のクラウドサービスを併用するケースが増えています。このようなパブリッククラウドやSaaSなどのクラウドサービスに加えて、拠点間の通信やリモートワーク環境、遠隔地でのバックアップ先など、多岐にわたる環境を一つのセキュアな閉域網でつなぐサービスも登場しています。

これにより、複雑化するITインフラ環境でも、安全かつ効率的にデータのやり取りを行うことが可能になります。

パブリッククラウドをより安全に使うための対策3選

3.ハイブリッドクラウドという選択肢もある

クラウドサービスの導入において、パブリッククラウドの利便性とプライベートクラウドのセキュリティを両立したいというニーズが高まっています。その答えの1つとして「ハイブリッドクラウド」という選択肢が注目されています。

ハイブリッドクラウドは、パブリッククラウドとプライベートクラウドの良い点を組み合わせることです。例えば、プライベートクラウドをオンプレミスに構築し、そこに高度なセキュリティ要件を満たすデータやアプリケーションを配置することで、安全性を高められます。

一方で、Webに公開したいアプリケーションや情報はパブリッククラウドに配置することで、必要な情報だけをスピーディーに共有可能です。このようにハイブリッドクラウドを利用して2つの環境を使い分けることで、セキュリティと利便性の両面を最大化できます。

まとめ

本コラムでは、パブリッククラウドのセキュリティリスクと、セキュリティを向上させるための具体策を紹介しました。パブリッククラウドはその利便性から多くの企業に利用されていますが、一定の範囲においてセキュリティリスクが伴います。自社の責任範囲を正しく理解し、適切なセキュリティ対策を実施することが重要です。

最後に、パブリッククラウドが抱えるセキュリティリスクの解決策として、鈴与シンワートが提供するサービスを2つ紹介します。

1つ目は、セキュアで高品質なネットワークサービス「S-Port X(クロス)コネクト」です。インターネットを経由せず、クラウドサービスや社内ネットワーク、リモートワークの環境などに接続できるため、自社専用のセキュアな閉域網を構築することができます。

2つ目は、パブリッククラウド「S-Port Cloud V Series」です。このサービスは、ファイアウォールなどの複数のセキュリティ機能により、外部からの不正なアクセスを防ぐことができます。また「S-Port データセンターサービス」と組み合わせることで、ハイブリッドクラウドの構築も可能です。

鈴与シンワートは、貴社のニーズに合わせて様々なサービスの中から最適なソリューションを提供します。ぜひお気軽にご相談ください。