大喜多 利哉の最新ネットワーク技術事情

著:大喜多 利哉氏

シリコンフォトニクス第05回 15年09月更新

こんにちは、デジタルサポート大喜多[http://www.ookita.biz/]です。

今回は「シリコンフォトニクス」についてお話ししたいとおもいます。データ転送に利用される光ファイバーなどの光学デバイスの材質は、一般的に石英ガラスが用いられています。石英ガラスよりも強く光を閉じ込める事が可能なシリコンを用いて光学デバイスを作製する技術として注目を集めているのがシリコンフォトニクスです。トランジスタなどの電子デバイスを作製する技術を用いて光デバイスを作製できるため、製造コストの低減や電子デバイスと光デバイスを一つのチップに集積化させることも可能になると考えられています。

現在、コンピュータにおける計算処理はシリコンの電子集積回路(LSI)が担っているわけですが、回路内部・チップ間の通信ですとか、コンピュータ間の通信も計算処理の速度に影響するようになってきました。実際にスーパーコンピュータの世界では1台あたりの処理性能だけでなくコンピュータ間の通信速度が全体の性能に影響されるとのことです。このように計算処理とデータ伝送が不可分の関係になっている現状において、この技術の実用化が進むことで、コンピュータ自体の小型化・省電力化が進み、設置スペースあたりの処理性能が大幅に向上すると考えられています。

現在も様々なメーカー・研究機関で基礎研究・実用化の検討が進んでいる状況ですが、すでに製品として実用化されている例を挙げましょう。

Compass Networks(旧社名:Compass Electro-Optical Systems)はシリコンフォトニクスを活用して他社との明確な差別化を図っているスタートアップ企業です。現状のサービスプロバイダ向けコアルータではプロセッサ間の通信(インターコネクト)を電気回路を用いて実現しているため、100Gbps超のデータ伝送を実現するために非常に複雑な設計になっていると同社は指摘しており、この電気回路を光ケーブルの結線に置き換えてしまうことで小型化と省電力化を実現した、としているのが同社の販売しているコアルータ製品です。同社によれば、「3ラックで構成されている他社コアルータと同等の性能を6Uで提供できる」としています。

ただし同社では「他社コアルータを完全に駆逐する」ことを目標にしているわけではなく、1つの選択肢として製品を供給しているというスタンスであり、日本の販売代理店でも同様の展開を考えているようです。

同社では「データ量が急速に増大する一方で、単位データ量当たりの通信事業者の売り上げが減少する時代に対応する製品」と述べており、私もこの点がこれからのネットワークを考えるうえで重要なポイントになってくると考えています。

サービスのネットワーク化/大容量化、クラウドコンピューティングの普及、スマートデバイスの増加など、データ転送量が急激に増加している一方で、通信事業者はネットワークインフラの拡充や制限を設けることでサービスを維持している状況ですが、最大の問題は「処理すべきデータ量が急激に増加し設備投資が必要になっている状況下においてはデータ量あたりの売り上げが減少する」ということろではないでしょうか。処理すべきデータ量が増加しているにも関わらず、コストを下げなければ事業を維持できない、コンピューティングの処理性能向上と比較してネットワークの高速大容量化は立ち後れている、というのがネットワークの世界の現状です。

実際、サービス品質維持のために価格に転嫁するというのは好ましい状況ではありませんし、通信事業者もそのことは理解しており「低価格・大容量」という課題をクリアしてビジネスを発展させていく必要があると考えています。そのために、いかに低コストで高速大容量のデータ転送を実現していくかが重要であり、シリコンフォトニクスのような新技術によってそれが実現される世界になることで、情報化社会はさらなるステージへ進むことができるのではないか、と筆者は期待しています。