オンプレミスからのクラウド移行に失敗しないためのデータセンター活用術 第16回 25年12月 / 最終更新:2025.12.04

情報システムを構築・更新する際に、クラウドサービスを優先的に検討する「クラウドファースト」という考え方があります。このクラウドファーストの考え方は定着しつつあり、オンプレミス環境からクラウド環境へ移行を進める企業が増えています。

しかし、クラウド移行にはセキュリティリスクやコスト管理の難しさ、通信遅延(レイテンシ)といった課題も伴います。このような課題は、データセンターを効果的に活用することで解決できる可能性があります。

本コラムでは、オンプレミス環境からクラウド環境へ移行する主なメリットを整理するとともに、移行時に考えられる課題や、それを解決するためのデータセンター活用術をわかりやすく解説します。

オンプレミス環境からクラウド環境に移行するメリット

オンプレミス環境では、ハードウェアの管理やメンテナンスが必要であることや、機器の調達コストが大きいなどの課題があります。これらの課題には、クラウド環境への移行によって解決できるものもあります。
ここでは、オンプレミス環境からクラウド環境へ移行することで得られる主なメリットを紹介します。

運用負荷の軽減

オンプレミス環境では、サーバやネットワーク機器などのハードウェアを自社で保守・管理しなければならないため、機器のモニタリングやメンテナンス、トラブル時の対応など、運用にかかる負担が大きくなります。

クラウド環境へ移行すれば、ハードウェアに関わるメンテナンスなどの対応が必要なくなるため、運用負荷を大幅に軽減することができます。
また、クラウドサービスの多くは冗長構成や自動バックアップ機能を備えているため、トラブル時や災害発生時に迅速な対応が可能になり、BCP対策としても有効です。

スケーラビリティの向上

クラウド環境を利用する大きなメリットのひとつが、高いスケーラビリティ(拡張性)です。

オンプレミス環境でリソースを増強したい場合には、サーバの増設作業などに伴うシステムのダウンタイムが発生します。そのため、ピーク時の負荷に備えてサイジングに余裕を持つことが必要で、結果的にリソースを持て余すケースも多く見られます。

一方、クラウド環境の場合は、運用開始後でも柔軟にリソースを増減できます。例えば、まずは最小限の構成でスタートし、利用状況に応じて必要な分だけリソースを拡張するといった無駄のない運用が可能です。

初期コストの削減

オンプレミス環境では、サーバやネットワーク機器を自社で調達する必要があるため初期コストが大きくなる傾向にあります。

クラウド環境の場合は利用量に応じた従量課金性が一般的で、機器の調達が不要になるため初期コストを大幅に削減することができます。
また、クラウドサービスは契約完了後、すぐに利用可能なため、運用開始までの期間を大幅に短縮できることも大きな利点です。

クラウド移行に伴う課題

クラウドサービスにはさまざまなメリットがありますが、クラウド環境ならではの課題もあります。
ここでは、クラウド環境への移行に伴う課題について解説します。

セキュリティリスク

クラウド環境はどこからでもアクセスができるため、公開設定やアクセス権限などの設定ミスがあった場合、部外者に情報が漏洩してしまうリスクがあります。
実際にクラウドサービスの設定ミスによる情報漏洩の事例は多発しており、総務省は2024年4月に「クラウドの設定ミス対策ガイドブック」を公開しました。

また、脆弱性を悪用した不正アクセスやDDoS攻撃など、サイバー攻撃の被害を受ける可能性があるため、セキュリティリスクを検知する仕組みを取り入れる必要があります。

参考:総務省「クラウドの設定ミス対策ガイドブック」の公表
https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01cyber01_02000001_00209.html

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レイテンシ(遅延)問題

クラウド環境は、インターネット経由でのアクセスを前提としているため、レイテンシ(通信遅延)の問題は避けられません。クラウド環境では、端末とサーバの間に物理的な距離があるため、オンプレミス環境に比べて通信速度が劣る傾向にあります。

また、ネットワークの輻輳による影響を受けるため、リアルタイム性を重視するシステムの場合には不向きな可能性があります。

トータルコストの増大

クラウドサービスを利用する場合は、従量課金の特性から、適切にリソースを管理しないとランニングコストが増大する可能性があります。

例えば、高いパフォーマンスを必要とするシステムや、大容量のデータを扱うシステムをクラウド環境に移行した場合、運用に関わるトータルコストが高くなってしまうケースがあります。
また、使用量によって金額が変動するため長期的な費用の予測が難しく、コスト管理が複雑になるといった問題もあります。

オンプレミスからクラウド移行する際のデータセンター活用術

クラウド移行に伴う課題は、データセンターを活用することで解決できる場合があります。
ここでは、クラウド移行時にデータセンターを有効に活用する方法について解説します。

ハイブリッド構成でリスク分散

クラウド移行を検討する場合は、すべてのシステムをクラウド環境に移行するのではなく、必要に応じてハイブリッド構成を検討することをおすすめします。
ハイブリッド構成とは、クラウド環境やオンプレミス環境、ハウジングサービスやホスティングサービスなど異なる環境を組み合わせて利用するシステム構成を指します。

例えば、アクセス性が重視されるシステムであればクラウド環境を利用し、機密性やリアルタイム性を重視するシステムであればオンプレミス環境で構築します。
また、データセンター事業者のハウジングサービスやホスティングサービスを利用し、VPNや専用線を用いて自社と接続すれば、オンプレミス環境と同等のメリットを保ったまま、運用負荷などを軽減することが可能です。

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クラウド接続サービスの利用

データセンター事業者によっては、AWSMicrosoft Azure、Google Cloudなどの主要なクラウド環境への専用線接続サービスを提供しています。
このサービスを利用することで、閉域網でクラウド環境に接続できるため、セキュリティリスクや通信安定性の問題を同時に解決することができます。

また、本コラムを掲載している鈴与シンワートの「S-Port X(クロス) コネクト」は、データセンターのハウジングサービスをはじめとする各種サービスと、外部クラウドサービス、オンプレミス環境などをシームレスに接続することができます。

参考:鈴与シンワート,S-Port X(クロス)コネクト提供イメージ

「オンプレミス→クラウド移行時のデータセンター活用術」のまとめ

オンプレミス環境からクラウド環境への移行は、運用負荷の軽減やスケーラビリティの向上などさまざまなメリットがありますが、セキュリティリスクやレイテンシ(通信遅延)などクラウド環境特有の課題もあります。
クラウドファーストという考え方がありますが、すべてのシステムがクラウド環境での運用に適しているわけではありません。

クラウド移行に失敗しないために、運用するシステムの特性を整理して、データセンターのハウジングサービスやクラウド接続サービスの利用も視野に入れ、ハイブリッド構成を検討してみましょう。

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